備考 |
序文、凡例、奥付は共にない。誤字、脱字も散見され、一行まるごと抜けている例も見られる。一部語彙を双行注という形で並列表記をしているのが最大の特徴である。この双行注は基本的には北京官話と南京官話の区別を示したものであると考えられるが、「您納」と「您」といった同義語や、「路東那個海味店的纔好哪」と「路東那個南京店的纔好」、「拿茶掃一回」と「拿条葉掃一回」のようにシチュエーションの違いによる使い分けといった例が見られるなど、必ずしも南北差とは断定できないものも双行注として記載されている 。この種の並列表記は1890年代以降Mateerの『官話類編』や『無師初學英文字』(1897)などで見られ、意識的に南北で違う語彙を上下あるいは左右で併記している。この種の並列表記については『華語拼字妙法』(1916)の序文には「When Northern and Southern mandarin use different characters, the author at first thought of putting the two readings side by side, but on further consideration decided that this would not be an improvement.」という記載があり、少なくとも1890年頃から1910年代頃までは利用されていた。 |